闇夜ヨルの恐怖記録 3
けれどそれはアリスにとって関係のないことだった。


目的は彼の髪の毛か爪を手に入れることだけ。


切った爪を手に入れることは難しそうだけれど、髪の毛ならきっとなんとかなる。


アリスは彼の少し長めの髪を見て思う。


歩くたびにサラサラと揺れる黒髪は艷やかで、女性から見ても羨ましくなるくらいに綺麗だ。


どうやって手入れしているんだろう?


シャンプーやリンスはどこのメーカーのものを使っているんだろう?


浮かんでくる疑問をすべて飲みこんでこっそり彼の後をつけて歩く。


女性たちは断られたことで早々に離れていってしまっていた。


電車に乗られたら面倒なことになると思っていたが、彼は駅とは反対方向へ向かっていた。


家が近いのか、徒歩みたいだ。


これなら徒歩のアリスも尾行することは簡単だ。


アリスは舌なめずりをして彼の背中を追いかける。
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