闇夜ヨルの恐怖記録 3
あとは……。


アリスは今度はゆっくりと顔をあげた。


本当に反省していると見せるために目尻に涙を浮かべて。


「あ、髪の毛がついていますよ」


顔をあげたタイミングで今気がついたという様子を装い、手をのばす。


彼は逃げなかった。


アリスの行動を疑ってもいない。


アリスは少しだけ震えている指先で髪の毛をつまんでとった。


「ありがとう。もうこういうことはするんじゃないよ?」


「はい。わかりました」


もう1度うつむくと、彼は満足したように表通りへ戻って帰っていく。


アリスは手の中の髪の毛をギュッと握りしめて微笑んだのだった。
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