闇夜ヨルの恐怖記録 3
支払期日までに決められた金額を持ってこないと、彼氏を作ることはできないはずだ。


しかし女性は左右に首を振って見せた。


「お金はいいわ。あなたはまだ学生さんだしね」


「え、でもそれじゃあ彼氏は作れないんじゃないですか?」


アリスは身を乗り出して聞く。


やはりお店から追い出されてしまうのではないかと思ったのだ。


「仕事を引き受けると言ったでしょう? 大丈夫よ。私はお金を持っている人からたくさんいただいて、そうじゃない人からはいただかない主義なの。幸い、今は他にお金持ちのお客様から仕事をもらっているから、あなたは特別よ」


まるでブラックジャックのようだ。


アリスは信じられない思いで女性を見つめる。


「それで? 外見はそのサンプル通りとしても、記憶はどうする?」


「記憶ですか?」


「そう。あなたとの出会いや、付き合ったキッカケ。いろいろなことを作ることができるのよ」


そんなものまでこちらで決めることができるのか。


詳細を考えてこなかったアリスは一瞬焦ったが、理想ならいくらでもある。


道に迷った時に手を貸してくれたとか。


落とし物を拾ってくれたとか。


告白してきたのは相手から。


場所は観覧車の中。
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