闇夜ヨルの恐怖記録 3
それもやがて地面に吸い込まれていき、どんどん小さくなっていく。


「カ、カイ! 今までありがとう!」


ドロドロがすべて地面に吸収されてしまう直前にアリスはそう声をかけた。


カイは返事をすることなく、服だけ残して跡形もなく消えていってしまったのだった。


後に残されたアリスは呆然としてカイの服を見つめていた。


「アリス、帰ろう」


しばらく立ち尽くしていたアリスの腕をキユナが掴んで言う。


「うん」


そうだ、もう帰らないと随分襲い時間になってしまった。


きっと両親も心配していることだろう。


アリスは硬直していた両足を無理矢理動かそうとする。


けれどなかなかその場から離れることができなくて、胸がどんどん苦しくなってきた。


ついにはその場に座り込んで嗚咽を漏らして泣き始める。


「アリス……」


完全に動けなくなってしまったアリスの背中をさする。


「カイがいなくなっちゃった。理想の彼氏だったのに」


「仕方ないよ。クローンだったんでしょう?」


「だけど彼氏だったんだよ。私の彼氏だった!」
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