闇夜ヨルの恐怖記録 3
☆☆☆

その夜、ユウキが病室にやってきた。


白いニットの帽子をかぶっている。


「どうしたんだよその帽子」


「かあちゃんが買ってきてくれたんだ。似合うだろ?」


「あぁ。いいな」


シュンヤは頷いて笑った。


確かにその帽子はユウキによく似合っていた。


だけど今は夏だ。


ニットの帽子は少し暑苦しそうに見える。


「トランプしようぜ」


「スピード?」


「おぉ」


ユウキはいつもどおりベッドの脇に座ってトランプを配り始めた。


「……お前はなにも変わらないな」


「なんだよ急に?」


「みんな変わった。両親もユナも」


シュンヤは配られるトランプに視線を落として言う。


全体的にはなにも変わっていないのかもしれない。


けれどお見舞いに来ている時間が短くなったり、いつの間にか泣きそうな顔をしていたり、少し無理していたり。
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