若旦那の恋は千鳥足
気まずい。
座れたのは嬉しいけど、全く知らない人とさし向かいっていうのはやっぱり気まずい。
もう一度、お礼を言っといた方が良いかな。



「あの…」
「ご注文はお決まりですか?」



間の悪いことに、話しかけようとした時に、たまたまウェイトレスさんがやって来た。



「あ、え、えっと…」

視線を上げたら、あの人と目が合った。



(わっ!思ってたよりもイケメンかも…)



にわかに心臓が騒ぎだす。



「決まってたら、どうぞ。」

「え?そ、それじゃあ、ロ、ロイヤルミルクティーのホットと、アップルパイを。」

「じゃあ、僕も同じものを。」



え?本当に良いの?
今の言葉って、なんか、恋人同士みたいじゃない?
もしかして、このウェイトレスさんも、私達のこと、恋人同士だと思ってる?
きゃーー、なんか恥ずかしいんですけど~!



「……どうかしたの?
汗がすごいよ。」

「え?あ…そ、その…に、荷物が重かったので…」

咄嗟に、理由にもならないことを口にした。



「確かにすごい荷物だね。」

「は、はい。そうなんです。
だから、汗が…」

私はハンカチで汗を拭い、へらへらと無駄に笑った。
とりあえず、誤魔化せて良かったとホッとした。
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