天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


氷輪は月影の異母兄弟であり天界の皇太子だ。


むやみやたらに殺せば、それこそ二千年前の戦争を再び起こしかねない。


確かにこれはいつもの戦とは違って長くかかるかもしれない。


「紅蓮…戦神であるそなたに出向いてほしい。よいか」

「…」


普段であれば即決するものの白蘭を一人残していくのがどうも気がかりだった。


「嫌か?」


威圧的な声で父が聞いてくる。魔帝の命令はこの魔界で絶対だ。それは皇太子である紅蓮も例外ではなかった。


「いえ…ただ…」

「なんだ。言ってみよ」

「この戦を終えたら私に褒美をくださいますか?」

「そなたに欲しいものがあったとはな…よいだろう。何でも望みを叶えよう」

「感謝します。父上。では早速、軍を率いて行ってまいります」


魔帝との褒美に紅蓮は玲心との婚約破棄を考えていた。


そして白蘭を想いを伝えると決心した。

< 121 / 276 >

この作品をシェア

pagetop