天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


後宮制度は私には必要ない。あっても意味がないのだ。


私は白蘭だけしかもう目に映らん。


「本気なんですね」

「当たり前だ。戦が終わったら告げる」

「まあ、紅蓮様は一度決めたら引かないから止めても無駄ですよね」

「よくわかっているな。では戦の準備を頼む。私は白蘭に会いに行く」


朱雀は、私の性格をよく知っている。そしてすぐに戦の準備に取り掛かりに行った。

白蘭に会いに行こうと部屋をでる。

人間界に行ったのだろうか、いや、もう日が落ちる頃だから虹彩樹の庭か。

庭に向かうと、やはり白蘭の姿があった。

はじめて会った時のように、花びらを愛でている。


「探したぞ」

「あ、紅蓮」

「だから言っただろ。人間界よりここの方が美しいと」

「そうかしら。まあ、虹彩樹の庭も好きだけれど人間界と比べられるものではないのよ」

「…そんなに人間界に思い入れがあるのか?」

「はじめは死んだ母を探しに行ったのがきっかけだった。無駄だとわかっていても会いたかったの」


そんな経緯があったのか。


< 123 / 276 >

この作品をシェア

pagetop