天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
法術をあのように派手に飛ばして、冷静さに欠ける。
月影の方がよっぽど皇太子にふさわしいものを…。
紅蓮業火を使ってもいいが、皇太子を殺すわけにはいかず紅蓮は避け続けた。
「避けるだけか!なぜ反撃してこない!戦神とは名ばかりか!!」
「戦う理由が私にはないからな!お互い軍を引けば平和に済ませられる」
説得するも届かない。
確かにこれでは戦は長引くな。
月影が弟は無知だといっていたが、無知というより馬鹿だな。
…どうしたものか。
呆れ半分に考えていたところ、見知った声が聞こえた。
「やめよ!氷輪」
「兄上!?」
「月影!」
月影が現れたのだ。
戦場になど姿を現したことのないあの穏やかな月影が来たことで氷輪も止まった。
「兄上!なぜここに?助太刀に来て下さったのですか!」
嬉しそうにする氷輪に月影は言った。
「戦を止めに来たのだ」