天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
謀反人となった私の母と一族はすでに跡形もなく、唯一残ったのは母が身に着けていた翡翠の腕輪だけなのだった。
「きっと素敵なお母さまだったのね」
「…そうだな」
母の記憶はない。
そもそも一族の記憶自体がないのだ。
気付いたときには、一族は滅び母は死んでいた。
「あ、兎月!兎月を置いてきてしまったわ」
「あ…」
人間界での時間の流れは早い。兎月を置いてきて天界にきてどれくらいたっただろう。
白蘭に言われて二人で戻ると、兎月はさっそく泣いていた。
「ひどいです。ひどいのです」
「すまなかった兎月」
「ちょっとそんな泣かないの。男の子でしょ」
白蘭と二人で兎をなぐさめた。
兎月が泣き止むと白蘭は魔界に帰ると言った。
私も今日は新月だから紅蓮との約束がある。
そして三人は別れを告げたのだった。