天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


気付いたら部屋で朝を迎えていた。


もう八咫烏はいないのだと思うと心が寂しくて泣きたいはずなのに涙が出なかった。


首飾りを見ると白い羽と赤い羽しかなく、父上の黒い羽はなくなっていた。


「本当に…もういないのね」


侍女であった明明もいくら待っても、もう来ないのだ。


「紅蓮…」


紅蓮に会いたい。


あの暖かい腕でいますぐ抱きしめてほしい。


そう願っても紅蓮は現れなかった。そして紅蓮だけではなく、雪梨様、香林、朱雀も姿を見せなかった。


どうして誰も来ないんだろう。


頭が痛い。魔気病のせいだ。



< 236 / 276 >

この作品をシェア

pagetop