天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


「状況は?」

「極めて厳しいです。病の身であのような惨劇を目にしたのです。心身共に弱っています」

「白蘭…」

「もう私の薬も効きますまい…」


悲しそうに薬師神は去っていった。

私は白蘭の手を握った。


「すまない…守れなかった。そなたの家族を…守れなかったっ」


あの時の泣き叫ぶ白蘭の声が耳にこびりついて離れない。


同胞を殺した時の感触も。


陶武殿が足を切られたところも。


秋月と明明が一瞬で死んだあの時も。


忘れられない。



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