天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「…白蘭」
白蘭が気がついたようで目線が空中をさまよった後、私をとらえた。
その瞳は悲しみも恨みも、かつての喜びも無かった。
何を思っているのかわからない瞳で私をじっと見る。
「どうした?水が欲しいか?食べ物を用意させようか?なんでも叶えてやる」
「…」
白蘭は何も言わずに私の頬に流れる涙を手で拭った。
その手が弱々しく、もう死期が近いのだと感じた。
せめてこれ以上、悲しまず苦しまずに家族の元へ行って欲しい。