天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「しかし匂いが強いのではないか?」
「いいの。友がくれたものなの」
「友…?月影か?」
月影はあの日以来、新月でも姿を現さなくなった。白蘭も人間界へ行けていない。
どこかで聞きつけたのか?
「玲心よ」
「あの女が!?では尚更、ここには置いておけぬ」
消そうとする紅蓮に白蘭が叫んだ。
「やめて!!」
「だが!」
「紅蓮がいない間、玲心はずっと私と一緒にいてくれた!!」
そう言われた紅蓮はピタリと止まった。
白蘭の言葉が鋭い刃となって紅蓮の心を抉った。
助けられず傍にもいられなかった無力さを責められているようだった。
「玲心は一族を亡くした私をずっと慰めて看病してくれたわ…紅蓮に顔合わせる資格がないって…そんな優しい人がくれたものなの」