天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
---------------------------------------


「玲心、様子はどうですか?」


魔后に尋ねられて私はにんまりと笑った。


「順調です。魔后殿下。魔后殿下にいただいた香も欠かさず炊いております」

「そうか。あの香は思考を鈍らせる作用がある。その効果は薄いが今の八咫烏の娘にとっては十分だろう」


そうだ。白蘭はすでに私のことを信じ切っている。


そして私の言葉にのせられて紅蓮のことも疑い始めている。


「炎狐族の巧偽術はまだ使っていないな」

「はい」


炎狐族の秘術、巧偽術は姿・形を一刻の間変えることができる。だがそれは一生に一度しか使えぬ貴重な術であった。


「よいか。然るべき時に使うのだ」

「はい。魔后殿下」

「さがれ」


魔后殿下との謁見を終え、香炉の様子を見に白蘭の元へ向かう。

話によると紅蓮がつきっきりで世話をしているとか。

忌々しい。

紅蓮のことだ。香炉の違和感に気づくかもしれない。

消されてなるものか。







< 248 / 276 >

この作品をシェア

pagetop