天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「まったく。しょうがないわね。あなたの従者に免じて大サービスよ。左目でいいわ」
「わかった」
「では、契約成立ね」
その声を最後に羅刹の鋭い爪が迫り私の左目をえぐり取った。
痛みに膝をつきそうになるのを抑える。
すぐに朱雀が駆け付けた。
一方、羅刹は紅蓮の左目を自分の目のくぼみにはめ込むと、高笑いをした。
「これで人型にまた近づいたわ!なんて鮮やかな景色なのー!!!!」
こんな薄暗い森でも、羅刹にとっては初めての景色になるのだな。
「さあ、はやく薬をよこせ」
朱雀が手を出すと羅刹は薬を出し笑いながら去っていった。
薬が手に入った。
これで白蘭を救える!
「朱雀!はやく帰って白蘭に薬を」
「ええ!行きましょう!」
敵が来る前に私と朱雀は上空にあがり魔宮目指して飛んだ。
「紅蓮様。大丈夫ですか?」
「…ああ」
左目を失ったことで正直方角がいまいちだが朱雀について行けば迷わずに済む。
朱雀がいてくれてよかった。
左目から出血しながら私は必死に飛んだ。
白蘭、待ってろ。今、助けてやるから。