天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「そう…婚姻は本当なのね」
「そうだ」
「ねえ、紅蓮。私のこと愛してた?今までで一度でも愛したことはあった?」
愛していると言ってもらえれば、もう何も望まない。
静かに眠るわ。
そう白蘭は涙しながら紅蓮に聞いた。
だが、紅蓮はそれを裏切った。
「…ない」
「え?」
「愛したことなど一度もない」
「じゃあ虹彩樹の庭で私たちが結ばれたのも」
「忘れた」
「あの岩場での夕日も」
「忘れた」
私は今でも鮮明に覚えているのに、紅蓮はすべて忘れたというの…
衝撃的な言葉に胸が痛い。
私のこの想いは一体何のためにあったんだろう…
「お前が、魔気病になったとき面倒だと思った…すぐに死ぬと思ったが案外しぶとかったな」
「…」
絶望に陥る白蘭をよそに紅蓮は言葉をつづけた。