天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「もしかしたら母上に会えるかもしれないでしょ。母上に会えれば父上も優しくなるわ」
私がそういうと兄上は押し黙った。
昔から父上は私に厳しくあたった。
理由はハッキリと話してくれないが母上は私を生むとき酷く難産だったらしくすぐに亡くなった。その影響か一族は皆、黒い翼なのに私だけ白銀なのだ。
「父上はお前を心配してるのだ」
「そうね」
励ましてくれる兄上に微笑む。
「いつも行っているとはいえ、この新夜祭(しんやさい)の間だけは駄目だ」
「わかってるわ」
新夜祭とは魔界の皇太子が初めて自分で行う祭りだ。
今回は皇太子が自ら侍女を選ぶようで全魔界の女子が魔宮へ集まらなければならない為、しかたなく父上が問題児の私も連れてきたのだった。
「侍女なんて絶対いやよ!人間界に行けなくなるじゃない」
「何を言う!侍女に選ばれるのを望む女子がどれ程いることか…」
呆れたとため息をつく兄上。
「とにかく帰るぞ」