天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


そうね。確かに敬語は苦手な方だし。


「…わかったわ」


納得すると皇太子は満足そうに笑った。


「何を読んでた。見せろ」

「…嫌よ」

「見せろ。命令だ」

「そういえば逆らえないと思ってるのね。はいはい。わかったわかった。どうぞー」

「魔宮の掟に関するものだな」


隣に座って読む皇太子。

皇太子が侍女の隣に直に座るなんて。


「雪梨にもらっただろ?」

「なんでわかったのよ」

「雪梨は私の乳母だったものだ。私も学べと渡された。雪梨はそなたを余程目にかけているな」

「私の身分が低いからよ」

「それは違うぞ。この掟の書物は雪梨がわざわざ直筆でつくったものだ」


そうだったんだ。私はてっきり身分の低さから嫌がらせを受けているのだと思っていた。

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