天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
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「皇太子殿下。侍女と何をしていたのですか」

「墨を磨ってもらっていただけだ」


何もかも見透かしているくせに雪梨は小言をいうために聞いてくる。


「白蘭をお気に召したのですか」

「なっ。た、ただの侍女だ」

「ただの侍女にあのような態度はとらぬようお願い申し上げます」


遠まわしに注意される。


確かに炎狐族の双子は母上の一族だったため侍女に選ばれたのだった。母はおそらくあの二人を私の後宮に入れさせたいのだろう。


侍女選びも勢力争いに関わっている。


黒豹族の香林は二千年前の戦争で活躍した将軍の一人娘だ。


白蘭以外の三人は貴族でどの娘を後宮に入れても申し分ない。


「雪梨。そなたは白蘭に入れ込むなというが、そなたこそずいぶん白蘭を気にかけているようだが?」




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