天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「いえ。父上、私はまだまだ経験が足りぬゆえ婚儀は控えたいと存じます」
「そなたはこの魔界の皇太子。そして戦の神です。これまでも数々の戦をし負傷したことなどありません。経験など充分に足ります」
さすが自分の一族、炎狐族の玲心をはやく魔宮に迎えたい母上はひかないな。
しかし父はそういう訳ではないようだ。
「父上、どうかご容赦を」
「婚儀をのばそう」
紅蓮が思った通り、魔帝は婚儀を取り下げた。
本当は今すぐにでも玲心との婚約を破棄したいが炎狐族の力は魔界には必須だ。
「だが、紅蓮。あまり侍女に入れ込むでないぞ。この父を失望させるな」
「はい。では失礼いたします」