天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「では、私はこれにて失礼します」
父上と義母上に声をかけるも二人は氷輪に夢中で声は届かなかったようだ。
いつも通りの挨拶を終えて兎月と共に自分の宮へ向かう。
この宮も天宮からは遠く仕える侍女もいない。清潔に見えるのは私の法術で保っているからだ。
庭に咲く鈴蘭にいつも通り法術で水を与えた。
「申し訳ございません。私がもう少し法術が使えればお役に立てますのに」
「よいのだ。そなたと会話できれば充分だ」
兎月は天女様から与えられたとき会話もできぬ、ただの兎だった。兎月自身の力で二千年かけて会話と少しの法術を得たのだ。
会話をしていると兎月の腹から音が鳴った。
「も、申し訳ございません。」
「もう三日になるか。私の方こそ兎月に謝らねばならぬな」