天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
私が天宮での立場が弱いため食事もろくに取れない。人間と違い餓死することはないが空腹感は感じる。兎月は三日、私は五日食べていない。
私は髪にさしていた簪をとり兎月に渡した。
「兎月。これと引き換えに食事をしてきなさい」
「なりません!これは残り少ない簪の一つです。天界の第二皇子である月影様には必要なものでございます」
私を案じる兎に笑顔で答える。
「簪よりも従者の空腹の方が大事だ。私の身なりなど天界では誰も気にしない。受け取りなさい」
「…な、なりません!」
少し迷った兎月だったが頭を振って断る。
では、どうするか…。
悩んでいると空に月がないことに気が付いた。
「兎月。今日は新月だな。友に会いに行ってくる」
「あ、ほんとだ!」
新月の日には友と会う約束をしているのだ。
今日はその新月だ。
おそらく紅蓮なら、何とかしてくれるだろう。