天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
この分だと三日、いや五日は食べていないな。
「ったく。月影は謙虚すぎる。侍女に用意させて食事くらいきちんと食べろ」
月影の皿に食べ物をのせると月影は微笑んだ。
「すまない」
「欲しいものは手に入れろ。その法術があれば皇太子の座なんてすぐだろう」
月影の法術は並みのものではない。この魔宮に誰にも気づかれず入宮できることがその証拠だ。
おそらく今の天帝もそれに気づいているのだろう。実の息子とはいえ母親が謀反を起こせば息子はおろか一族全員が死罪だ。そんな中生き残っているのは月影の法術の凄さを見込んでのものだ。
「そのようなことはできない。弟の氷輪は善良だ。ただ無知なだけなのだ。私はこのまま第二皇子のままで良い。このまま兎月と静かに暮らし新月には友と酒を飲めればそれでよい」
「相変わらず無欲だな。まあ、そこが月影の良いところか」
こんな法術の持ち主が謀反なんて起こしたらそれこそ大ごとだからな。