天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
白蘭と初めて会った虹彩樹の庭を思い出す。
「皇太子の私に少しも媚びず恐れず生意気だ。」
「その割には嬉しそうだ」
茶化してくる月影の額を指ではじいてやった。
「いたいぞ。紅蓮」
「悔しいならやり返してみろ」
けしかけたが月影は知らん顔で酒を飲む。
「ほらほら」
もう一度、額を指ではじくと月影が立って追いかけてくる。
そんなくだらないことをしていると、時間はあっという間に過ぎて言った。
「紅蓮。そろそろ私は天界に帰る。兎月が待っているからな」
「ちょっと待て」
月影を引き留め残った食事をすべて包み持たせた。
「兎によろしくな」
「ありがとう。では次の新月にな。」
「ああ、次の新月に」