天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


白蘭と初めて会った虹彩樹の庭を思い出す。


「皇太子の私に少しも媚びず恐れず生意気だ。」

「その割には嬉しそうだ」


茶化してくる月影の額を指ではじいてやった。


「いたいぞ。紅蓮」

「悔しいならやり返してみろ」


けしかけたが月影は知らん顔で酒を飲む。


「ほらほら」


もう一度、額を指ではじくと月影が立って追いかけてくる。

そんなくだらないことをしていると、時間はあっという間に過ぎて言った。


「紅蓮。そろそろ私は天界に帰る。兎月が待っているからな」

「ちょっと待て」


月影を引き留め残った食事をすべて包み持たせた。


「兎によろしくな」

「ありがとう。では次の新月にな。」

「ああ、次の新月に」


< 76 / 276 >

この作品をシェア

pagetop