天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「ちょっと切っただけ」
「まったく。気をつけろ」
ぶっきらぼうにそういうと紅蓮はすばやく蘇生術で治してくれる。
蘇生術は高度な術で他者を癒す術だ。その術を侍女の私にしてくれるなんて。
普段意地悪ばかりなのに、ふとした時に優しくしてくれる。
「あ、ありがとう」
「私が見ていないところで怪我するな」
「私だって怪我したくてしてるんじゃないのよ」
「一言多いぞ。先ほどのようにしおらしくしていろ」
口調とは別に紅蓮も白蘭も笑顔だった。
「紅蓮様」
部屋に入ってきたのは紅蓮の側近の朱雀だ。
彼は紅蓮直属の軍、朱雀軍を指揮する。戦は見たことないからわからないが、かなりの手練れだそうだ。
紅蓮が鳳凰で朱雀は火の鳥。それに侍女は八咫烏ってまったくいい組み合わせね。
「白蘭もいたか」
紅蓮の側近のため朱雀とはもう仲良しの友達だ。
私に気づくと笑顔で声をかけてくる。
私も朱雀に小さく手を振って挨拶した。