天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
「...紅蓮の許婚」
初めて虹彩樹の庭で出会った時も許婚が決められているって言っていたっけ。
魔界の皇太子よ。許婚がいるなんて当然のことじゃない。
頭ではわかっているものの何故か落ち込んでいる自分がいた。
他の侍女と違い、自分のことを皇太子ではなく名前で呼ばせたのも八咫烏一族の私をわざわざ侍女に選んだのも全部気まぐれなのよ。
きっとそう…。
知らず知らずのうちに勘違いしてた。自分は少し特別なんだと。
そんなはずはないのに。私は八咫烏一族の者で紅蓮は皇太子。普通だったら会話することさえできない身分なのに。
玲心様の顔を思い出す。
「綺麗な人だったな」
美しく凛々しく、まさに紅蓮にピッタリよ。炎狐族の長というのも納得だわ。
兄上にもらった簪と父上からもらった風切羽を握って、ため息をついた。
「父上、兄上どうやら私は身分違いの恋をしたようです」