天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
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「あ…」

「どうしました?紅蓮様」

「いや…なんでもない」


白蘭に何も言わずに出てきてしまった。


戦場で紅蓮は指揮をとりながら、ふと白蘭を思った。


白蘭は誤魔化したがあの手の傷はただの切り傷ではない。


火炎術で出来たものだ。白蘭は水系術を使うのだから事故で出来たものではない。


思い当たるといえば、玲心…か。


あの者は嫉妬深く侍女にも容赦がない。見た目は美しいが中身は冷酷だ。


「ちょっと!紅蓮様!いくら強くても戦中に考え事しないでくださいよ!」

「あ、ああ。」


朱雀が飛んでくる矢を剣で切りながら叫んでいる。


朱雀の言う通りだ。いままで戦場でこのようなことはなかったのに。





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