社長、それは忘れて下さい!?

 会話に入ってきた旭が定型文を述べると、杉原は血相を変えて拒否反応を示した。だがこの反応も予想の範囲内なので、旭はまた涼しい笑顔を作る。

「受付でご記銘頂いた際に説明があったとは存じますが、本日は宝探しゲームを予定しております。イベントの景品には本日のみの限定デザートプレートや、新店舗で使用可能なペア優待券などをご用意させて頂いております。杉原社長もぜひご参加下さい」
「そ、それとボディーチェックに何の関係があると言うんだ……!?」
「その宝探しゲームですが、万が一弊社で用意いたしました『宝』と類似したものを所持されていますと、紛らわしいことがございますので。大変申し訳ございませんが、入場前のボディーチェックにご協力頂いております」

 旭がにこやかに言い放つ。その説明は少々鼻につく口調かもしれないが、慌てふためく杉原は気にしていられない様子だ。

「ボディーチェックといっても類似品をお持ちでないか把握するためですので、貴重品を預かることはございません。万が一類似品をお持ちの場合は、そちらのみ責任を持ってお預かりして、ゲーム終了後には皆さまのお手元までお届けいたしますので、ご安心下さい」

 駄目押しにさらに言い添える。

 これが防犯上の理由でのボディーチェックなら、憤慨する人もいるだろう。今日の招待客は人の上に立ち人を動かす立場にある者が大半を占めており、プライドが高い者も多い。だがこれはあくまで、類似品の混入を防ぐための所持品確認だ。
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