社長、それは忘れて下さい!?

「少量でもかなり強力なんだろうな」

 龍悟は『気付かなかった涼花に落ち度はない』とフォローしたつもりだったが、その台詞に旭が目を輝かせた。

「へえ、そんなに強力なんですか?」
「おい、旭。変なとこだけピックアップするな」
「いやいや、そうは言いますけど、男なら当然興味ありますよ」
「劇薬に興味を持つんじゃない」
「社長、どうです? 試しに飲んでみては」
「おお、いいぞ。お前が今夜俺の部屋に泊まって、俺と添い寝してくれるならな」
「嘘です、冗談です、ゴメンナサイ」

 とんでもない会話を繰り広げる龍悟と旭に、涼花は自分の存在を極限まで薄めるよう努める。

 いつも思うが、このテンションとこのテンポの会話の中に入っていける気は微塵もしない。間違ってもこちらに会話を投げないでくれと切に願う。

「まぁ、とにかく……これもラボに回して詳しく成分調査してもらおう」

 一通り騒いだ後で龍悟がそう結論付けたので、涼花は消していた気配をそっと戻して時計を確認した。スピーチが終わり少し休憩の時間を挟んだが、龍悟はこの後のプログラムもこなさなければいけない。
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