社長、それは忘れて下さい!?
もちろんサイズは違うが、龍悟が着ているものが同じバスローブだとは思えないほど、垣間見えた胸元と首筋からは色気が漂っている。バスローブというより魔性の王の羽織ものにすら見えてしまう。
「あ、いえ……その……ふわぁっ!」
顔や胸元を直視しないように目線を外して言い訳を考えていると、突然屈んだ龍悟に身体を抱き上げられた。視界が反転して天井が見えたと思った瞬間、身体がふわりと浮き上がる。
突然の浮遊感に驚きの声を発すると、すぐに柔らかい布地の上に降ろされた。確認するまでもなく、そこがベッドの上だと理解する。
「社長……」
涼花の身体をベッドに降ろした龍悟は、制止を口にしようとした唇の端に小さなキスを落として、その言葉を遮った。
思わず目を閉じてしまう。すると今度は反対の唇の端に口付けられる。それから指先で前髪を優しく掻き分けられ、晒された額にも唇が寄せられる。優しい触れ合いが恥ずかしくて、もどかしい。
額に寄せられていた唇が離れたと感じて、閉じていた瞳をゆっくり開ける。その視界の先に龍悟が微笑む姿を見る。離れた唇が涼花の唇に重なると同時に、緊張した身体もやわらかなシーツの上にゆっくりと押し倒された。
無言でじっと見つめ合う。バスローブの留め紐にかかる指は、涼花の身体を甘くとかすほどに、熱い温度を帯びていた。