社長、それは忘れて下さい!?
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散々と恥ずかしい言葉と行為を繰り返され、すっかり体力を消耗してしまった。日頃から身体を鍛えているらしい龍悟と涼花では、あまりに体力が違いすぎる。それはわかっているつもりだったが、こうして激しく抱かれるとその差を身をもって味わってしまう。
「大丈夫か?」
「……はい」
涼花がぐったりと脱力していると、身体を抱き寄せられた。腕枕の状態で額に張り付いた髪を優しく払われ、さらに頭を撫でられる。汗で髪の中まで濡れているからあまり撫でないで欲しいのに、頭はぼーっとするし、身体はだるいのでうまく言葉に出来ない。
されるがままになっているうちに、徐々に残存していた快感が遠のき、逆に気恥ずかしい気持ちが一気に押し寄せてきた。
「社長、バスローブ……着てもいいですか?」
「いや、だめだ。涼花の身体が気持ちいいから、俺はこのまま寝る」
「!?」
恥ずかしさを解消するために提案したのに、それを上回る恥ずかしい台詞を呟かれた。
きっと赤くなっているであろう顔を見られまいと、シーツの端を頬の傍まで引き上げる。もぞもぞと隠れた涼花の様子を見て、龍悟が笑いながらまた頭を撫で始めた。
目尻を下げ、口元の端をゆるく綻ばせる顔は涼花も初めて見る表情だ。龍悟は仕事中も常に笑顔を絶やさないが、恋仲にある人にはまた違う笑顔を向けるのだと知る。
涼花はただその表情に見惚れていたが、目が合った龍悟は涼花が別の感情を抱いていると解釈したらしい。