社長、それは忘れて下さい!?
涼花は自分の考えが、自分で決めた苦しいルールに縛られていることに気付く。それに比べて旭の発想は自由で素直な考え方だ。
「違った?」
「……いえ。そうですよね」
不思議そうに訊かれて、涼花はふるふると首を振った。涼花の憑き物が落ちたような表情に、ようやく旭も安堵の笑みを零す。
「私は……コントロール出来るようになるんでしょうか?」
「さあ、どうかな。 そもそも今フェロモン説で話進めてるけど、俺べつに専門家じゃないからね」
「……」
散々盛り上げておいて落とす。
そう言えばこの人はそういう人だったな、と気付くと、涼花は何だか心が軽くなる気がした。
解決策はやっぱりわからない。けれど旭のお陰で少し素直になってみてもいいのかもしれない、と思えた。
龍悟に向けられる感情を、少し受け入れてみたらどうか? と自分で自分に問いかける。たったそれだけで、今までの重くて苦しい感情が嘘のように引いていく心地を覚えた。
「ま、社長は涼花の心が追い付くまで待ってくれるだろうし、考えたところでどうせ解決策なんてないんだしさ。あんまり難しいこと考えないで、デートぐらい行ってみたらいいじゃん」
他人事だと思って気楽な調子で言う旭に苦笑する。そう簡単な話でもないと思うのだが、旭にとっては簡単な話らしかった。
「あとさ、涼花はもっと笑うといいよ」