社長、それは忘れて下さい!?
「今朝のチェック入れた?」
「まだです。私も今来たところで……。あ、コーヒー淹れますね」
その提案に顎を引いた旭は、向かい合って配置されたPCのスイッチを順番に入れていく。涼花は部屋の入り口近くにある対面式キッチンに立つと、コーヒーメーカーに豆とフィルターをセットする。
飲み物の準備をしていると、再びドアロックの解除音が聞こえた。その音を聞いた涼花は、今度こそ本当に硬直してしまう。息をすることさえ忘れてしまう。
程なくして入ってきた人物は室内にいた二人の姿を見て、
「おはよう。早いな、二人とも」
と軽快に声を掛けてきた。
「おはようございます、社長」
「……おはようございます」
二人が朝の挨拶をすると、社長である一ノ宮 龍悟がちらりと涼花の方を見た。涼花がコーヒーの準備をしていることを確認すると、いつものように低くてよく通る声に名前を呼ばれる。
「秋野、俺もコーヒー」
「……はい」