社長、それは忘れて下さい!?

 ランチを摂りながら軽い自己紹介を済ませると、ミーナが苦笑いを交えながら涼花に謝罪を述べてきた。

「ごめんね。勝手に色々聞いちゃって」
「いえ、こちらこそ。人に聞かせるような話じゃないのに、相談に乗って下さって……本当にありがとうございます」

 旭に自分の体質と今までの経緯を打ち明けた時、旭は誰にも言わないと約束してくれた。涼花は先輩の言葉を信じたが、後日旭から『自分の彼女に会ってみないか』と提案を受けた。もしこの話を受けるなら事前に彼女に事情を話す事になるけど、涼花が嫌なら言わないし、断っても全く構わないと言ってくれた。

 涼花は迷うことなく旭の提案を受けた。旭の恋人がどんな人かはわからなかったが、彼が信頼できる人なら、涼花にとっても信頼に足ると疑わなかった。

 何より涼花は、専門的な知識を持った人に自分の体質についての見解を聞いてみたかった。それに女性が相手なら、病院に行って知らない男性の医師に事情を話すよりもずっと安心感がある選択だった。

「確かに私の専門ではないけど、すごく興味深いわね」

 旭から事前に聞いた話と涼花の体験を聞いたミーナは、顔の前に組んだ手に顎を乗せてそう言った。関心深く涼花の顔を見つめたミーナはにっこりと笑顔を作って女性らしい意見を述べた。

「涼花は、キスが好きなのね」
「え、ええぇ、え……」
「ふふふ……可愛いわね」
< 209 / 222 >

この作品をシェア

pagetop