社長、それは忘れて下さい!?

 それに龍悟は、その後は一度も記憶を失っていない。最初のうちは目が覚めるたびに涼花が龍悟の記憶を確認していたが、だんだん龍悟の方から前夜の行為の一つ一つを事細かにフィードバックしてくるようになったので、あまりの恥ずかしさに涼花も朝の確認はしなくなった。

 ミーナが言うように、キスをして快感物質が放出されても、涼花が自分の感情に上手く折り合いをつけてコントロールできているならば問題はないと捉えるべきなのかもしれない。もし今後同じ事が頻発するようになったら気軽に連絡して、とミーナは言ってくれた。

「涼花の事、応援してるね」
「ありがとう、ミーナさん」
「ミーナでいいわよ。『さん』なんて要らないわ」

 連絡先を交換すると、涼花はミーナと一緒にグラン・ルーナ社へと向かった。ミーナは旭と会社の近くで待ち合わせをしているらしい。今日の涼花は彼女と会うために代休を使わせてもらったが、龍悟も旭もいつも通りに仕事をしているのだ。

 終業時刻を過ぎた頃を見計らって会社の近くへ来ると、涼花のスマートフォンに龍悟から連絡が入った。

『社長室まで来れるか? 旭の彼女も連れてきてくれ』

 用件のみ書かれたメッセージを確認すると、すぐに了承の返事を送る。
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