社長、それは忘れて下さい!?
「お前、どうせ月曜からの仕事に支障が出る、とか思ってるんだろ」
「それは思いますよ! だって社長が忘れても、私は覚えてるんですから……!」
「だから忘れないって」
「それはそれで困ります!!」
必死に訴える涼花に、龍悟がまた意地悪な顔で笑う。ふとブラウスのボタンに添えられていた指先が離れると、大きな手が後頭部へ回り込んだ。そのままぐいっと引かれたかと思うと、龍悟の唇が耳元に近付く。
「案外、お前が忘れるかもしれないぞ」
「え……? それ、どういう……?」
「最後まで意識保っていられる自信、あるのか?」
「!!」
耳元で低く囁かれて、涼花の全身は一気に燃焼した。自信があるか、と問われてもそんなのはわからない。
涼花が固まって何も言えなくなると、気付いた龍悟が身体を離して溜息を吐いた。
「わかったわかった。じゃあ理由をやる」
「……理由?」
「そうだ。仕事熱心で生真面目なお前には『俺の好奇心に応える』だと抱かれる理由にならないんだろ? だから別の理由をやる。――作り笑いでも構わない。俺のために『笑える』ようになれ。社長命令だ」
「……」
「秋野、仕事中は全然笑わないだろ。最初はそういう性格なのかと思ってたが、友達と話していると普通に笑うんだな。俺や旭が笑わせようと思っても反応が薄いから、さっきまでは知らなかったが」