社長、それは忘れて下さい!?

 確かに涼花の恋心さえ無視すれば、感情表現が乏しいと勘違いしている龍悟にとっては理にかなった話なのかもしれない。

 会社の利益のために、涼花は自然な感情表現を覚える。そのためには恋愛経験を積む。恋愛をするためにはトラウマを乗り越える。トラウマを乗り越えるためには、涼花を抱いた男性が記憶を失うという『ファンタジー』から覚める必要がある。けれど。

(相手が社長である必要はないよね!? しかも私、いま振られたのに……!)

 最後の抵抗が言葉になる前に、再びブラウスに手が掛けられた。ぷち、と小さな音を立て、ボタンが一つ外される。ベッドについていた手は龍悟が急に引っ張ったので、簡単に支えを無くしてしまう。

 ベッドに倒れ込んだ涼花のブラウスからボタンをさらに一つ外すと、龍悟は空いている手で自分のネクタイを緩め、そのままする、と抜き取った。

「しゃ、ちょ、……待って」

 咄嗟に押し返そうと思ったが、一八七センチの大柄な龍悟に、筋肉どころかスポーツ経験もない涼花では勝てるはずもない。込めた力はくたびれ儲けに終わってしまう。

 そうしている間にも三つ目と四つ目のボタンが解放されていく。はだけたブラウスの襟を開かれると、龍悟の目の前に標準よりも大きい胸を晒してしまう。

「へえ……オレンジって。随分可愛いな」
「……やっ、見な、で……!」
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