社長、それは忘れて下さい!?
呼吸を楽にするだけであれば、締め付ける下着を取り払えばそれでいいはずだ。だがそれだけで涼花の身体が楽になったようには見えない。頬を紅潮させ、目を閉じたまま荒い呼吸を繰り返し、時折鼻にかかったようなか細い声が漏れる様子を見て『楽になっている』と判断する人はいないだろう。
龍悟は二つの分岐路に立たされていた。
一つは、このまま涼花に自分の寝室を貸すという選択。身体の疼きは自分で処理させ、万が一吐いたりシーツを汚した場合は、それらは後で洗濯をすればいい。
もう一つは龍悟が涼花を抱く選択。意識が覚束ないので涼花の意思は確認できないが、これから薬の作用が強まっていく可能性を考えると、それが最も手っ取り早くて確実な方法に思えた。それに容体が急変しても、傍にいれば即座に対応することが出来る。
「……はぁ」
主な選択肢は二つしかない。その答えを決めかね、延々と悩み迷う。それが涼花のためだとしても、どちらも正解でどちらも不正解な気がする。いくら考えてわからない。
何度考えても、龍悟の思考は後者に引っ張られる。
「……秋野」
そうしている間にも腕の中にいる涼花の体温はどんどん上昇してきている。辛そうなのが、よくわかる。
だから龍悟は、自分の選択を受け入れるための覚悟を決める。腕にぐっと力を込めると、薄く色付いた白い肌と細い身体がピクリと反応する。その誘惑に理性が飲まれないよう、龍悟はもう一度深い息を吐いた。