社長、それは忘れて下さい!?
2-4. Fluffy morning
「ん……?」
いつもの起床アラームを遠くに聞いた涼花は、重い瞼を開いてゆっくりと視線を彷徨わせた。スマートフォンは枕元に置いているので、アラームは頭上から聞こえるはず。しかしなぜか、今日は足元から音が聞こえる。
不思議に思って起き上がろうとしたが、その瞬間全身に筋肉痛のような重い痛みが走った。
「!?」
起き上がれない。下半身に力が入らない。特に下腹部の違和感が著しい。その感覚は生理痛にも似ているが、痛みというより足の付け根の周辺が感覚を失ったように鈍麻している気がする。
自分の身体の状態にも戸惑ったが、首を動かして室内を見回した涼花はさらに仰天してしまう。
「え、ここ……どこ?」
視界に映るのは全く身に覚えのない部屋だった。カーテンが閉められているので室内は薄暗いが、その上下からは朝日が漏れ出している。部屋には涼花がいるベッドの他に、クローゼットらしき格子のついた大きな扉と出入り口となるドアがあるだけで、他には一切何もない。
自宅ではない空間で目覚めたことに動揺を隠せない。だからまずは時間と場所を確認したいと思うが、身体が動かない。
どうしよう、と焦っていると、入口のドアがカチャリと音を立てて開いた。驚いて首を動かすと、ドアの向こうから姿を現した龍悟と目が合った。
「しゃ、社長……?」
「ああ。おはよう、秋野」
「……お、おはよう……ございます……?」