社長、それは忘れて下さい!?
それに警察のような捜査権限のない一般人が、正確な入手ルートを調べることも難しい。自分の管理下にない人間が秘密裏に行う取引など、止めることは不可能だ。
「こっちはどうしようもないな。証拠がなきゃ手は出せない」
龍悟の唸り声を聞いて、旭もお手上げだと身体を伸ばした。旭の身体の動きに合わせて、ワークチェアの背もたれの金具がギギッと悲鳴を上げる。
「あとは薬の特徴が出てくるのを待って、その都度対策するのと……。あのエロ親父の前に、涼花を連れていかないようにするしかないですかね」
旭の声に同意して頷く。薬について何か情報があるのならばともかく、そう簡単に詳細がわかるものでもないだろう。薬物への対策のしようがない以上、当面は涼花を遠ざける以外に回避手段はない。
自分のデスクに戻った龍悟は、椅子に腰を下ろしながら、杉原に『埋め合わせする』と言い残してきたことを思い出した。咄嗟にそうは言ったが、正直何もしてやりたくはない。
「そういえば、そろそろGLSのパーティーだな」
スケジュール管理システムを開こうとしてふと思い出す。GLSとは『Grand・Luna・to・Stella』の略で、グラン・ルーナ社が経営する飲食店の中でもスイーツに特化したビュッフェ型のレストランだ。