社長、それは忘れて下さい!?
質の良い旬のフルーツをふんだんに使ったケーキやタルトが人気で、ウッド調のオープンスペースに並べられたこだわりの調度品も店の人気を後押ししている。
店内の至るところにあしらわれた緑の色彩が開放感と自然の癒しを醸し出しており、ランチタイムは女性に、ディナータイムはカップルに人気があるのだ。
GLSのオープンは今年二店舗目、年度が変わってからは初めてになる。親交のある人物はオープン記念のレセプションパーティに招待しており、件の杉原にも取引先枠で声を掛けている。このタイミングで杉原をパーティに招きたくはないが、招待状はすでに送った後だ。
「弾きますか?」
旭の言うように、問題があるとわかった人物は出入りできないよう手配するのが一番だが、その『問題』を証明する証拠がない。それにこちらから招待状を送っている手前、今さら取り消すのは難しいだろう。
「秋野だけじゃなく、他の女子社員や従業員もいるからなぁ」
「取引先やメディアの出入りもありますしね」
「やるなら自然な理由で弾くのが一番だが……骨が折れるぞ」
「何とか考えときますよ」
旭が口の端をわずかに上げて、龍悟の考えを肯定した。『頼もしい奴だなぁ』と呑気に呟くと、旭が意外そうな声を出した。
「お怒りじゃないんですね」
「怒ってるに決まってるだろ。本当なら全部の契約切ってやりたい気分だよ」