社長、それは忘れて下さい!?
「妹みたいに思ってたんだけどな……」
いつまでも生真面目で、垢抜けない。仕事を覚えるのが早く、書類の作成にも、来客の応対にも、気遣いにも問題はない。目を離していても安心できるほど信頼している。それは兄弟姉妹に対する感覚に似ていると思っていた。
だが、それは龍悟の勘違いだった。
初めて抱いたときに聞いた涼花の真剣な悩みの内容は、龍悟には到底信じられないものだった。けれど嘘を言っているようには見えなかったので、純粋に興味が湧いた。好奇心があることに対して狡猾な考え方をすることは、自分でも自覚していた。
上司の命令に背けない涼花を、多少無理のある社長命令で意図的に言いくるめた。会社の利益に涼花が使えると思ったのも事実だが、実際に使おうという気持ちはさらさらなかった。
当然乱暴にするつもりもなく、一晩でも共に過ごすならちゃんと気持ちよくさせてやりたいと思っていた。
本当は涼花が少し泣いていた事にも気が付いていた。好きでもない男に抱かれたくないからなのだろうと思ったが、今までの人生で女性に拒否されて泣かれた経験がなかったので、余計に火がついて後半は本気で抱いていた。
それから数日間は目が合うと慌てて逸らしていて、そんな仕草が可愛いと思っていた。なのに時間を置くと、あの夜の出来事をなかったことにしたいとでも言うように、普段通りに接してきた。