社長、それは忘れて下さい!?
そう言うとエリカはスマートフォンを取り出して、前回と同じように涼花にその画面を見せてきた。
「今日は無理でも、イベントも合コンも毎週のようにあるんだから」
「す、すごい……」
「社長のことは、考えてもどうせ結論出ないんでしょ? だったらそれはそれとして置いといて、まずは新しい出会いだけでも探しに行こうよ。ね?」
エリカの提案に、涼花は仕方がなく『うん』と頷く。
彼女の言う通りだ。自分に興味がない相手を想い続ける時間を無駄とは言わないが、どうせ叶わないことは十分思い知っている。だったらその時間を、少し別のことに使ってもいいのかもしれない。何せその片想いの相手に『恋愛をしろ』『恋人を作れ』と説き伏せられている有様だ。
もちろん、いま出会いに恵まれたところで、他の誰かに恋をするのは難しいと思うけれど。
(恋か……)
『恋愛をしろ』が『恋をしろ』と同意義なら、その目的はもう達成している。けれど恋するだけでは、龍悟の望むような結果は得られていないらしい。
ならば次は恋人を作るしかないと思うが、いくら思考を巡らせても龍悟以外に涼花がそうなりたいと思う相手が浮かんでこない。
そっと照れていると、エリカが不思議そうな顔をした。だから涼花は『なんでもない』とはにかんで、今度こそエリカの話を真剣に聞くために姿勢を正した。