社長、それは忘れて下さい!?
そう言って二人で笑い合う。ストレートな感情表現と明るい性格のエリカは、昔から涼花の心強い味方だった。
エリカとは楽しい時間も、嬉しい出来事も、いつも共有してきた。辛い日も、悲しい時も元気をもらえる気がする。
そう、辛くて悲しい思い出も……
「それで? 今日はなんかあったの?」
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれました!」
思考を振り払った涼花が首を傾げると、エリカが待っていましたと言わんばかりに胸を張る。指についたピザの打ち粉をおしぼりで拭き取ると、彼女はいそいそとハンドバッグを探り始めた。そして取り出したスマートフォンの画面上で何度かタップとスライドを繰り返すと、とある画像を涼花の目の前に押し付けてくる。
「え、何……パーティー?」
「そう! 出会いの場!」
戸惑いの声を上げると、エリカににこにこと笑顔を向けられる。
スマートフォンを拝借して画面をよく確認すると、そこには『カクテルナイトパーティー』と書かれた画像が映っていた。お洒落な料理やお酒の写真に、カラフルな文字で『出会い』の文字が躍っている。日時は次の金曜日の夜。場所は都内のホテルの最上階にあるバーを貸し切って行われるようだ。
「エリカ。私しばらく恋愛は……」
「涼花ねえ……そう言って、もう何年になると思ってるの?」
スマートフォンを返しながら答えると、エリカが頬を膨らませて顔を覗き込んできた。