社長、それは忘れて下さい!?

 突然の出来事に驚いて硬直する涼花の唇を、龍悟の舌先が触れる。ぬるりとした感覚に息を詰まらせると、今度は下唇に思い切り噛み付かれた。

「ふ、ぁ……」

 逃れるために声を出そうとしたら、その隙を狙ったように龍悟の舌が口内に侵入してきた。涼花はびっくりして腰を抜かしそうになったが、肩から腰に移動した龍悟の手に更なる力が込められ、崩れ落ちることすら許してもらえなかった。

「ん、んん……」

 龍悟の舌は涼花の口の中で何かを探すように動き回った。最初は唇を舐めていただけの舌が、徐々に深さを増すように奥へ侵入してくる。

 やがて目的のものを見つけたように涼花の舌を捉えると、敏感な場所から体温を奪うように強く吸われて歯を立てられた。

「あ、んぅ……ぁっ」

 思わず声が溢れるが、龍悟には一切の容赦がない。息継ぎさえ忘れ、這いずり回る龍悟の舌にただ翻弄される。

 いつの間にか全身の力が抜けてしまったらしい。手足の先がしびれたように脱力すると、涼花の手からスマートフォンが滑り落ちた。

 アクリルのケースが床にぶつかって高い音を上げると、龍悟は突然魔法から解かれたように我に返った。はっとして涼花の舌を食べるのを止めると、慌てて顔を引く。

 龍悟の顔が離れて身体が解放されると、ようやくまともな呼吸が出来るようになった。遮断されていた酸素が全身に供給され始める。空気が足りないせいで思考が働かずにいると、身体を離した龍悟が不満そうに呟いた。
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