社長、それは忘れて下さい!?

3-5. Perfect play


「山本社長。本日は遠方からお越し頂き誠にありがとうございます。空港は混雑しておりませんでしたか?」

「高橋様、お久しぶりでございます。フランスから戻られたのですね。本日は楽しんで行って下さいね」

「土屋様。先日はお嬢様のご結婚、誠におめでとうございます。ハワイでの挙式はいかがでしたか」

「吉木 琉理亜(るりあ)ちゃんだよね? 今日はケーキ食べに来てくれたの? ふふふ……ありがとう」


 受付横で来客と挨拶を交わす涼花の様子を見ていた旭が、小さく口笛を吹く。

 旭も涼花の記憶力が良いのは知っているが、普段は些細な情報も確認を怠らないよう徹底しているので、あまりその能力を認識することはないのだろう。

 だが今日のような催し物でいつもより気忙しい時でも、何の確認もせずにすらすらと相手の名前と肩書、そして近況まで息をするように思い出せる事には改めて驚くらしい。旭が『自分には到底真似できない』と肩を竦めるので、涼花は曖昧に笑みを返した。

 GLSの新店舗オープン記念パーティーは、心地の良い快晴に恵まれた。涼花と旭の位置からは陽光が差し込む新店舗の全体が見渡せる。もちろん挨拶に来た人々と談笑する龍悟の様子もしっかりと確認できている。
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