金曜日はキライ。
今日は朝から雨が降ってる。じめじめした空気をしているのが見ただけでわかる窓の外を教室から眺めつつ、頭の中では昨日の帰り道のことを繰り返し思い出してる。
あれから夜空に星が光りはじめるまで話しをしていた。志保梨ちゃんやゆり菜ちゃんと仲良くなれたことを話すと「あいつらうるせーけどいいやつらだよな」って言っていた。きみだっていいやつだよって、本当は言いたかったなあ。
その帰り道、わたしの自転車は常盤くんが引いてくれた。「星がきれいだ」って常盤くんが言った。わたしもとてもきれいな空だと思ったけど弓くんとの会話が浮かんで、話しをそらしてしまった。
なんにもないような顔で家まで送ってくれた。
「スポ大応援しにいくから」って言ってくれた。失敗できないなあ。練習に付き合ってもらっておいて格好わるいところは見せたくない。
「わたしも、行くね」と言うのはかなり勇気がいったけどなんとか言葉にすると、常盤くんはとてもうれしそうに笑ってくれた。
夢みたいな昨日だった。
眠りにつくまでずっと、心臓の高鳴りを感じていた。起きて次の日になってからもなかなか抜け出せなくて、幸せをかみしめていた。誕生日も、楽しみだよ。だけどその約束が終わったら、もう何もなくなっちゃうね。
「茉幌ー、移動いこー」
日葵の声が教室に響く。化学室への移動だからかちょっとうれしそうだ。
ぼんやり窓の外の雨を眺めていたから準備をしてなかった。
「ちょっと待って、えっと」
「あーもう、外になにかあったのー?抜けてるんだから」
「ごめん…あ、化学の教科書忘れてちゃった」
「ええっ、めずらしい!昨日なにかしてたの?」
どきっとした。軽く教室を見渡すと常盤くんの姿がまだあった。