金曜日はキライ。


昨日と一昨日、常盤くんに会ったことは絶対に言えない。


「あの…ぼんやりしてた」


誤魔化しの言葉がうまく見つからなくて、自分の気の利かなさに情けなくなる。


「まほろぉ…スポ大のことで悩んでる?今からでもわたしがゆり菜に言おうか?」


そうじゃない。昨日は、常盤くんと過ごせたことに浮かれていただけ。スポーツ大会ももうきっと大丈夫。今までよりは上手に、迷惑かけずにできるはず。

だから首を振ると「じゃあ何に悩んでるの?」と訊いてきた。日葵の目にわたしは、悩んでるように映っている。



何もない。ように振る舞えない自分が嫌だ。

こうして心配かけてしまうってわかってるのに。


「何もないよ。大丈夫」

「うそだよ。ねえ、わたしがわからないとでも思ってるの?」

「日葵、声おおきい…っ」


何かに悩んでるなんて、知られたくない。

まだ大半の人がいる教室のみんなの視線がこっちに向いているのを感じて身を縮ませる。


「あ、ごめん!…千昂に借りにいく?」


本当に申し訳なさそうに日葵があやまるから胸が痛い。本当にごめんなのはわたしの方なのに。


「持ってるかな…」

「一昨日化学の話しした時に今日授業あるって言ってたから持ってると思うよ」

デートだったのかな、土曜日。
休みの日に合える関係っていいなあって思う。


「ふでばことノート持って」

「あっノートもない…ルーズリーフ持ってくね」

「もー。茉幌心配!」


ごめんね。心配かけて…話せなくて、ごめんね。

言いたくないって思っていて、ごめんね。


< 130 / 253 >

この作品をシェア

pagetop