金曜日はキライ。
「あ、昨日のことはごめん、清雨じゃなくて雨綸から聞いたんだ」
「あ…そうなんだ」
じゃあやっぱり、だめだ。誰にも言わないでほしい。
でもそんなお願いしたら変に想われるに決まってる。隠す必要を聞かれたら、なんて答えればいいかわからない。
「わかってるよ。誰にも言わない」
「え…」
「ほろちゃんは本当にいい子だね。損するよ」
「千昂くん…」
千昂くんとこんなこと話したことない。日葵にも話してない。だから気づかれてるわけない。
でも…わたしがへたくそだから、やっぱり───
「言わないで」
こんなことお願いしていい相手じゃない。
「わたしのこと、誰にも…お願い」
だけど、弓くんに知られてしまった時とはくらべものにならないくらい、今呼吸がしにくい。
額にじんわりと汗がにじむ。
弓くんとはちがう。弓くんにバレたこととはぜんぜんちがう。千昂くんは日葵の彼氏で、常盤くんの親友。
「…本当、損するよ。わかったけど」
首を横に振る。損なんてしない。
きっとこの気持ちがバレた時のほうがずっとずっと、後悔する。
でもこんなことを自分の親友にまで隠しているって、千昂くんはどう捉えるかな。
「ごめんね、千昂くん。ごめん…」
「ほろちゃんがあやまることじゃないよ」
「…日葵のこと、」
勘違いしないで。日葵はちゃんと、千昂くんのことが好きだよ。
「うん、全部わかってるよ。大丈夫。なあそれよりさ、きっとほろちゃんが似顔絵ねだったら清雨の機嫌も直ると思うから頼んでみてね」
「千昂くん…ありがとう」
わたしはへたくそだね。
だけどわたしの気持ちが誰にもバレずにこの中にだけ留めておくことだけが、常盤くんに唯一できることなんだ。